“仕事は見て覚えろ”。

　かつて日本の社会では、“職人”の世界に留まらずどの職種にも、この“格言”というか“慣用句”というか“言い習わし”が囁かれてきた。

　“覚える側”からすれば、教えてくれた方が早いのになぁ、という言い分もあろうが、その言い分は無視されてきた。概ね“自分から覚えたもの”と“教えられて覚えたもの”では“理解の深さ”が違う、という“教える側”からの理屈で。

　これは両者の言い分に一理あるし、なかなか答えの出ない問題ではあるのだろう。でも一つ確かなことは、“見て覚える”のには時間が掛かる、ということ。かつて“一人前になるのに10年”といわれたように、“見て覚える”には普通10年掛かるし、社会全体もそれを許容した。

　でも、今は時代が変わったのだろうか、社会は“10年”待ってくれなくなった気がする。すぐに“成果”を出さなければ“使いものにならない”と切り捨てられるような社会になってしまったのかもしれない。

　否、社会に文句を云うつもりなど毛頭ない。ただ、社会の“カタチ”が変わってしまったのに、“見て覚えろ”は“酷なハナシ”と思うだけだ。人間の持つ“能力の量”は、たぶん進化していない。だから人は“見て覚える”のに時間が掛かる。当たりマエダのクラッカーだ。　・・・次回につづく