『名選手、名コーチに非ず』。

　言い古されたコトバだ。確かに名選手だったからといって、名コーチになるとは限らず、選手に求められる能力とコーチに求められる能力は、全くの別ものだということは今更言わずもがな、ではある。

　そもそも名選手と一口に言っても、それぞれの名選手に備わる能力もそれぞれだということにワタクシたちは気づくべきで、教える能力に長けた名選手もいれば、そうじゃない名選手もいる、…当たり前田のクラッカーだ。

　一方で、そんな些細なコトなど吹き飛んでしまうようなスーパーな名選手も世の中にはいる。要するに、教え方とか知識とか、およそ人を教え導くために必要とされるスキルなど、一切合切を超越してしまうような存在。そう、野球界でいえば長嶋茂雄や王貞治、それにイチローや松井秀喜といった、いわゆる天才と呼ばれるレジェンドたち。

　こういう人は、教え方が上手いとかは関係なく、その存在だけで教えを請う人にある種の内部変革をもたらすに違いない。そう、脳が勝手にアドレナリンやらドーパミンやらエンドルフィンやら脳内物質を分泌して、潜在能力が引き出されてしまうからだ。だからレジェンドにコトバは必要なく、その姿を見せるだけでトリガー（引きがね）の役割を果たしてしまうことになるわけだ。

　そうなるとレジェンドは単なるアドバイザーやコーチを脱して、いわゆる神さま仏さまの領域にランクされることになる寸法か。だって姿見せるだけで、人の悪いところを改善しちゃうわけだから…。否、神さま仏さまは姿見せなくてもいろいろ治しちゃうワケだから、その下にランクされるべきか。

　ということで、本学（国際文化理容美容専門学校 渋谷校/国分寺校）の理容科には理容界のレジェンドによる授業が用意されていますよ、というのがこのオハナシの本題。

　過日、卒業の迫った理容科の2年生（132期）に向けた『THE BARBER』代表ヒロ・マツダ先生（本学の卒業生！）による授業が行われておりましたのでパチリ。あの、これ先生の教え方云々のハナシじゃありませんよ、悪しからず...。

　『THE BARBER』といえば、現在のバーバーブームの火付け役ともいえるショップで、代表を務めるヒロ・マツダ先生は、1989年に米・ロサンゼルスで開催された『Beauty EXPO』に日本代表として出場され、あのヴィダル・サスーンやトニー＆ガイを抑えてThe Best Of World Theaterを受賞。さらに『現代の名工』に選出されたり『黄綬褒章』を叙勲されたりと、まさにその活躍と評価は理美容界のレジェンドたるに相応しい存在。しかも、そんな大御所が未だ現役バリバリというのだからキセキのようなハナシ。

　学生たちは、そんな生ける伝説の指導を直に受けており、まさに変革のトリガーを引かれたようでありました。