山谷 智子さん　＃代表取締役社長

イギリスで日本人としてのアイデンティティを探す

イギリスに行ったのは、美容師としてではなく語学習得のためですが、目的はなんであれ、自分一人身一つ、まず生活が一番はじめにきます。言葉はつたなくても、そのコミュニティに入っていけるかいけないかが試される。海外で暮らすためには、言葉以上に、現地の文化や習慣を受け入れられることが大切だと思います。
私はもともと、知らない土地でも物怖じせず飛び込んでいける性格なので、対人面での不安はあまりなかったのですが、イギリスで生活し、語学学校に通い、たくさんの人たちと関わる中で、必ず聞かれたのが「日本はどんな国なの？どんな歴史・伝統・文化があるの？芸術、音楽、文学は？」といった質問でした。その問いに、当時の私は全く答えられなかった。自分が生まれ育った日本のことを全然知らない、伝えられない。それから私は、日本のことを調べました。何故か留学先のイギリスで…。
外国の人たちと話をしていると、みんな自分の国のことをよく知っていて、誇りを持っている。自身が生まれ育った国の歴史や伝統文化、風俗、芸術は、その人のアイデンティティに関わること。自分は一体何者なのか？それに対する考えをしっかり持っていないと、海外での生活は辛くなってくると思います。
結局、イギリスには3年いました。TONI&GUYでのサロンワーク、JINGLESのアカデミーでの学びとNVQ取得など、美容師として地元の方をカットカラーするチャンスにも恵まれ、学びの多い充実した日々を過ごしました。※NVQ（National Vocational Qualification）とは、イギリスの職業技能国家認定制度による専門技術資格。

国家資格は強い!!美容師免許取得のために帰国

もともとはメイクに興味があったのですが、父からのススメもあり美容師の国家資格が取得できる美容学校に入りました。インターン制の時代で、国家試験を受けずに渡英してしまったため、国際文化当時の担任の先生から「日本に戻って国家試験を受けるように」と連絡が来て、帰国したんです。今は美容師をしていませんが、それでもあの時、美容師免許をとっておいて良かったと思っています。やっぱり「国家資格は強い!!」です。
※1998年3月31日をもってインターン制は廃止され2年制（通信は3年）に移行。新体制下では試験内容が大幅に変更されるため、旧体制の国家資格を取得していない卒業生には猶予期間中の国家試験受験を推奨した。

美容師からインストラクター、新たな世界へ

ティアーズに入社してからは、インストラクターとして日本全国を回りました。「日本なら日本語が通じるんだから、海外に比べたら楽」くらいの感覚で飛び込んだ新たな世界。美容師経験もいかせるし、技術や対人面の不安はなかった。でも一つ、大きな問題が…。インストラクターとして仕事をするには、製品の成分やその効果について、高いレベルでの化学的な知識と理解が必要だったのです。お客様の中にはマニアックな方もいらっしゃるし、質問にきちんと答えられないと信用されない。猛勉強しました。頭のやわらかい学生時代に「もっとちゃんと勉強しておけば良かった」と後悔しました（特に「化学」と「皮膚科学」）。丸暗記が必要なことも多く苦労しましたが、持ち前の負けず嫌いな性格も功を奏し、当社の研究室とも対等に話せるまでになりました。
今年の2月、父の跡を継ぎティアーズの代表取締役社長に就任しました。立場や仕事内容は変わりましたが、今でも、一人の客としてサロンに行き、美容師さんのいきいきと働く姿を見ていると、「いいなぁ、また美容師やりたいな〜」って思うことがあります。
仕事はいろいろあるけれど、美容師は、年代や性別を問わずひとを「笑顔」にできる。「笑顔」が作れる仕事ってそうそうない。それって「スゴイ強み‼」だと思います。
（2022年6月15日取材/文・斎藤久子/写真・山口貴弘）

Q.国際文化時代はどんな学生でしたか？

学科も実技も得意ではなかったけれど、運動会や発表会などの学校行事ではいつの間にか前に出ているタイプの学生でした。当時のクラスメイトや先生とは今もつながっています。

Q.学生の時にやっておくとよいことは？

頭のやわらかい記憶力の良い学生のうちに、「化学」や「皮膚科学」などの学科の勉強もしておくと良いと思います。美容師として働く上でも、これらの知識は必ず役に立ちます（ヘアカラーやヘアケアなど）。あと、年を重ねると手（技術）も固くなってしまうので、若いうちに技術の鍛錬はしておいた方がいい。学生のうちに美容室でバイトするのもオススメです。

Q.商品開発に興味があります。美容師から研究開発職に就くことはできますか？

研究開発職に就くには理系の大学を出ていないと難しいと思います。ただし、（当社は全て社内で行っていますが）メーカーと美容師（または美容サロン）が提携して、美容の技術的な試験を行なったり、現場の声を反映した商品を開発することがあるので、美容師として商品開発に携わることはできるかもしれません。

LUMOS DIAMOND HAIR COLOR（ルーモスダイアヘアカラー）

山谷さんが、美容師の視点から開発に深く携わり完成した「LUMOS DIAMOND HAIR COLOR（ルーモスダイアヘアカラー）」。11種類の天然植物成分配合で、毛髪に潤いを与え、カラー後のパサツキを抑える。放置時間中もリラックスできるアールグレイの香り。シアブルーをかけ合わせて透明感のあるクリアな発色を実現している。

THIONE NATURAL OIL（ティオーネ　ナチュラルオイル）

「THIONE NATURAL OIL（ティオーネ　ナチュラルオイル）」は、オーガニック認定原料を主とした自然由来成分高配合。髪だけでなく、ハンドやボディといった全身に使えるナチュラルオイル。サスティナブルな社会のための取り組みとして、CO2排出量低減効果のあるバイオマスプラスティック容器を使用している。発売以来大好評で生産が追いつかない状況だそう。

山谷 智子（やまや ともこ）

株式会社ティアーズ代表取締役社長。東京都出身。1997年3月、国分寺校美容科卒業。都内美容室勤務後、渡英。ロンドンのJINGLES（ジングレス/美容サロン＆アカデミー）で学び、NVQ（イギリスの職業技能国家認定制度による専門技術資格）を取得。同時期にTONY&GUYに勤務し、サロンワークを3年間経験。帰国後、美容師経験を経て、㈱ティアーズ入社。2022年2月、父・山谷次夫氏（現会長）の後を継いで代表取締役社長に就任した。

株式会社ティアーズ

株式会社ティアーズホームページ
本社・工場：東京都町田市小山ヶ丘1-9-7
TEL：042-798-5411(代)
インスタ→＠TIERS OFFICIAL
研究開発・工場・事務・物流を一箇所に集約、卸を通さない直取引など、企業努力により1985年の創業以来、高品質低価格を守り続けている美容室向けヘアケア専門メーカー。企業理念は「自然との共生」。