昨年11月末から12月初頭にかけて、本学（国際文化理容美容専門学校 渋谷校/国分寺校）で『文化論/美学』を担当する鉄のゲージツ家こと青野正さんが個展を開催していた。会場は東京・代々木上原の『Gallery YORI』さん。

　例年、かなり頻繁に個展を催す青野さん、こちらのギャラリーでの開催も頻繁で、必ず年に一度は開いている印象がある。

　そんな気の知れたギャラリーでの開催というわけか、この個展では氏の新境地にもなろうか鉄と異素材のコラボ作品が見られた。

　これまでも度々鉄と流木を組み合わせた作品なども見られたが、どちらかといえば氏の真骨頂でもある錆びた鉄と似たような風合いを醸す木肌の木材が用いられたりしていた気がする。

　ところが、今回錆鉄とコラボされた素材はなんとステンレス。錆びることを良しとしてきた氏が錆びない鉄を選択したのだ。さて、氏の真意やいかに。

　『行雲流水』（こううんりゅうすい）。

　決まった形を持たない雲や水のように常に形を変え、臨機応変に生きなはれ。

　このコトバから『雲水』（うんすい）と呼ばれる禅宗の修行僧も実践する変化を厭（いと）わない生き方。きっと青野さんもそんな生き方をしているのかもしれない。

　　ちなみに『ステンレス鋼』とは、鉄に10.5%以上のクロムを含有させ、且つ炭素含有量が1.2%以下の鋼と定義されるのだそう。

　　そういえば、「知り合いの造形作家から余ったステンレスを大量に譲り受けた」と青野さん云ってたっけ…。

　やっぱり氏は、『行雲流水』な御仁に違いない。