厚生労働省の資料*1によれば、日本には、理容師美容師の養成施設は、約270校あります。うち理容師養成施設が81施設、他方、美容師養成施設は260施設、理容と美容の併設校は70施設あります（平成25年度末時点）。さらに東京都に限れば、現在、美容科は30以上もの養成施設があり、うち理容と美容の併設校は6施設です*2。これらは厚生労働省が管轄している理容師免許・美容師免許の受験資格が得られる理容師・美容師養成施設であり基本的にその多くは私立の専門学校です。これら理容美容の専門学校は、理美容の風俗文化の歴史のなかでどのように登場してきたのでしょうか。理容美容の学校の淵源を探ってみましょう。

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公衆衛生の面から東京において1901（明治34）年に、「警視庁令代11号理髪営業取締規則」が公布され、理髪業は、届出制となり、警視庁は、理髪業者に対し、各警察単位に理髪組合をつくるように指示し、これに続いて全国の府県でも順次制定が進みました。そして理容美容業の近代化に貢献したとされるのが、1906（明治39）年の「大日本美髪会」の発足です。この組織を母体として、各種美容の講習所や美容・美髪学校が設立されていきました。1918（大正7）年に全国最初の理髪師の試験制度が大阪で公布され、翌年に理髪試験が実施されるのと軌を一にし、美髪学校の設立が相次ぎました*3。

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日本理容美容教育センター発行『美容現代史』（1970）によれば、大正初期は、理容は理髪学校、美容は美髪、整容学校名が見られ、昭和時代には美容学校と称する学校が多くなっています。1910（明治43）年に、東京神田に明治理髪学校、大阪には大阪理髪学校が設立され、1913（大正2）年には、東京女子美髪学校、翌年に、私立日本女子美髪学校、1915（大正5）年に大阪美髪女学校が設立されたと記されています。

近代的な美容技術の需要とともに職業婦人が増加し、弟子入りを希望する人が多くなることで、学校が設立され、その様子が『美容現代史』にも紹介*4されています。
「私の修行中のこの高木師匠の家も弟子入り希望者が多いため、組織を改め、『高木美髪学院』という名称で再発足しました。師匠は先生になり、弟子は生徒と、なんだか初めはおかしな具合でした。日本髪全盛な時代だけに入会希望は相当にありました。髪の技術を教えると同時に専門家の先生を呼び、美容学的な講義も受けられ、私など喜んで聞いたものでした。」*5

近代的な美髪技術の普及にともなう労働需要の高まりを背景に、従来の徒弟制度からの学校設立が相次ぐのが明治末期から大正初期です。そこではどのような教科内容だったのでしょうか。1913（大正2）年設立の東京女子美髪学校の教科内容（普通科）*6を見てみましょう。

東京女子美髪学校（普通科）の教科内容1913（大正2）年

大正ロマン時代を迎え、女髪結い、髪結いに美容師という表現が見られるようになるとともに電気アイロン技術や電熱式のパーマネントウェーブ機などにより女性の髪型や美容技術に大きな変革がもたらされ大正から昭和にかけても東京、大阪、愛知、兵庫などに美容技術を教える講習会や美容、美髪学校が多数設立されていくのです。
約100年近く前の理容美容専門学校の教育内容と現代の授業内容を照らし合わせてみると理容美容の風俗文化の時代の変化を感じられるかもしれません。

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社団法人理容美容教育センター発行（1970）『美容現代史』
公益財団法人理容美容教育センター発行（平成28年度発行）『文化論』

*1 厚生労働省資料　理容師・美容師制度の概要等について
*2 日本理容美容教育センター　養成施設一覧　東京都
*3 公益財団法人理容美容教育センター発行（平成28年度発行）『文化論』P.19～20
*4 理容美容教育センター（1970）『美容現代史』P.205
*5 伊奈もと著『髪と女優』1961（昭和36）年
*6 理容美容教育センター（1970）『美容現代史』P.207