何処かで投棄された“もの”がそのまま捨て置かれ、水（雨あるいは川）や陽や風に容赦なく晒されて分解し、長い時間をかけて、かつてその“もの”を構成していたマテリアルに還っていく。更にそのマテリアルは容赦ない劣化の道を辿り、もはや構成していた“もの”がいったい何であったのかさえ判然としなくなる。

　そうした捨て置かれ忘れ去られ、朽ち果てたさまざまなマテリアルのなかから“鉄”という素材を選んで蒐集し、その“鉄”たちから作品を生み出しているのが“鉄のゲージツ家”こと本学講師の青野 正さんその人。

　氏は「鉄たちの思うように作っている」と、さまざまな作品の創作意図を語るが、最近の氏の作風である“祈り”や“救い”といったテーマの作品群を観るにつけ、“鉄”の感謝の気持ちが氏に伝わっているのかと、あながち“物質に心は宿らない”とは言いきれない気がしてならなくなる。

　左様に“鉄”と何らかの交信をしていると思しき氏が「今回は鉄の言いなりに作った作品ばかり」とおっしゃる作品展を、甲府のギャラリー『INNOCENT（イノセント）』にて開催しております。

　ギャラリーは1Fと2Fの展示スペースに分かれていて、1Fはこれまでの氏の作風には見られないようなお洒落な作品が展示され、2Fは照明が落とされた“祈りの場”然とした空間になっておりますので、“鎮静”を求めたい御仁にはうってつけ、今週末まで開催されておりますので、ちょっと？　遠いとは思いますが、春の麗らかな一日、お足を運ばれてはいかが？

Information

青野 正『流鉄』展

会期：2017年3月18日（土）〜 3月26日（日）

　　　am11:00 〜 pm5:30  最終日はpm4:00まで

　　　22日（水）休廊日　　作家在廊日　3/18.26

会場：ギャラリー　イノセント　GALLERY INNOCENT

　　　〒400-0031　山梨県甲府市丸の内2-12-3

　　　tel:055-222-4402

　　　HP:http://innocentga.jp