鉄のゲージツ家こと、青野正さんの活動が盛んだ。

　先月は、7月の半ばから8月28日まで一ヶ月以上に亘り『縄文』にインスパイアされた作品を展示していたと思いきや、翌29日から9月3日までは、これまでも数回個展を開催してきた銀座の文化財レトロビル『奥野ビル』に居を構えるギャラリー『港房』（こうぼう）さんにて、『佇む鉄』と題した作品展を催していた。

　ワタクシがお邪魔した際は、来訪者も多く、ついぞ氏にハナシを伺うことが叶わなかったため、憶測ばかりの勝手なハナシに終始させていただくことをお許し願いたいが、案内状（ポストカード）の表題写真になった作品を含む数点の作品からは、荒涼とした大地に佇む墓標が想起され、悲しみや怒りを超えた虚しさみたいなものが感じ取れた次第（ワタクシだけかも…）。

　加えて、荒野や墓標といったキーワードから、かつて少年の心を鷲掴みにした『西部劇』のカウボーイが連想され、氏の作品に通底する少年の記憶が垣間見えて、ニンマリさせられるのでありました（これもワタクシだけかも…）。

　こうした作品展、作者のココロを感じ取りながら楽しむのも一興だが、それとは逆に作者の思惑などお構いなしに勝手に空想に耽るのも、亦（また）楽しからずや、なのであります。

　ちなみに、今回の作品展、他にバスキアを連想させる王冠らしきものが見て取れる作品や花札を思わせる作品もあったりと、相変わらずユニークではありましたが、少しこれまでの作風と異なったものも散見され、今後の青野ワールドに注目なのであります。