人種、民族、ジェンダー、宗教。これまでにないほど、それぞれの平等が叫ばれている昨今。

　ところが現実は、そうした動きに抗うかのようにますます対立の構図を強めている大国をはじめとするさまざまな国々。

　市民の願いは、ただヒタスラに平和を願うだけなのに、それを理解しない理解しようとしない国のリーダーたち。きっと彼らは、その平和を守るために「国として正しい選択をしているし、平和を維持するのは簡単なことじゃない」と嘯（うそぶ）くに違いない。

　確かにそうなのかもしれない。でも、他の人を押し退けてまで、争ってまで自分の平和が得たいわけではないのだ。人びとが望んでいるのは人の不幸の上に成り立つ繁栄ではなく、ごく慎ましやかな平穏な暮らしに過ぎないのに…。

　たぶん、こうした市井の人びとの願いは今に始まったハナシではなく、何千年も前から燻ってきたものに違いない。

　ネパールに人びとの願いを込めてつくられてきた『マウラ』と呼ばれる高さ1mほどの仏塔（木造）がある。起源は定かでないらしく今後の研究を待ちたいところだが、このマウラに魅せられコレクションしている人がいる。

　本学（国際文化理容美容専門学校 渋谷校/国分寺校）で文化論の授業を担当する鉄の芸術家こと造形作家の青野 正さんその人がまさにマウラに魅せられている人で、日本広しといえどもマウラのコレクターは青野さんだけではないかと云われているのだとか。

　過日、氏のマウラ・コレクション35本と氏の作品からなるコラボ展が東京都港区芝の『t.gallery』さんにて9/21~27日の会期にて開催。マウラの木肌と青野作品の鉄肌が奇妙な調和を醸す不思議空間が出現しておりました。

　仏塔に分類されるというマウラ。でも見た目にはイスラム教的でもありキリスト教的でもあるように見え、一目でさまざまな文化の影響を受けていることがうかがわれ、やっぱり世の中っていろいろなものが影響しあって混ざり合って成り立っているのだと、世界の調和を考えさせられた次第。

　ああそれなのに、勝手に国境線引いてああでもないこうでもないと争ってきた（いる）人間の愚かさよ。